カナダ在住の被爆者サーロー節子さんは、2017年7月、国連で核兵器禁止条約(以下核禁条約)が採択されたとき、「これを核兵器の終わりの始まりにしましょう。」とメッセージを発信しました。2020年10月、広島では平和記念公園で核禁条約を批准した国・地域が、発効に必要な50に達したことを祝うイベントを開催し、湯ア広島県知事や松井広島市市長をはじめ約200人の市民が参加しました。2021年1月22日に発効が確定した核禁条約への歓喜を世界にむけ発信しました。
この核禁条約は、核兵器の開発、実験、生産、使用、保有などを全面的に禁止するものです。これで、名実ともに核兵器は違法な兵器となり、威嚇することも禁止されました。また、核禁条約の前文には、「核兵器の犠牲者(ヒバクシャ)や核実験による被害者に留意する。」と人道性に触れています。しかし、米国やロシアなど核兵器保有国は、この条約に参加しておらず、核禁条約の核軍縮から廃絶へむけた過程を規定しきれていない現実もあります。
この核禁条約が生まれた背景は、2015年のNPT再検討会議における非核保有国と核兵器保有国間での激しい対立にさかのぼります。核兵器廃絶にむけた過程の明確化や、人道的な視点で保有そのものを認めない非核保有国と、段階的削減を主張する核保有国間で深い溝ができました。日本は、アメリカの核の傘にあり、「核兵器の抑止が必要な安全保障上の枠組みから見て、安全になるとは限らない。」と主張し、核保有国と共に反対する立場をいまだに崩していません。核兵器の終わりの始まりであると思いますが、「終わり」が見通せる状況ではありません。つまり、現実は険しい道のりなのです。そうした中、「平和とより良き生活」を標ぼうする生協には、まさに「平和の使徒」としての期待がかかります。
私は、「核兵器が、非人道的な兵器であり人類と核兵器は共存できない。」という主張を今こそ広く世論喚起したいと思います。そのために、日本政府に対して、核の傘での安全保障の枠組みからの脱却を求め、核禁条約への参加を求めます。並行して、2021年8月に開催予定のNPT(核拡散防止条約)再検討会議に参加して、同条約の第6条にある、「誠実に核軍縮交渉を行う義務」を核保有国に迫りたいと思います。私たちの時代に核兵器との共存を終わらせるためのパラダイムシフトを皆さんと取り組みたいと思います。
以上 |