原子爆弾が広島に投下されて68年目を迎えます。被爆者は、その平均年齢が78歳を超え、今なお放射線障害に苦しみ、不安な毎日を送っています。そのような状況にあっても、被爆者は「自分たちの地獄の苦しみを他の誰にも味わせたくない」と被爆の実相を語り続けてきました。その声は、多くの国々や市民社会に影響を与え、今まさに核兵器の非人道性に焦点を当てた動きが加速しつつあります。
しかし、その一方で、米国による臨界前核実験や新たなタイプの核実験、北朝鮮による核実験や弾道ミサイルの発射など被爆者の切実な願いに背く許し難い行為もあり、核兵器廃絶への道のりは容易ではありません。
また、先日開催された2015年NPT再検討会議第2回準備委員会では、80か国が共同で発表した「核兵器の人道的影響に関する共同声明」に日本政府が賛同しないという大変残念な出来事もありました。
そのような中、広島市長が会長を務める平和市長会議には、5月1日現在で156か国・地域の5,617都市が加盟しており、2020年までの核兵器廃絶を目指した取り組みが進められています。また、平和市長会議の呼びかけで始まった「核兵器禁止条約」の交渉開始等を求める市民署名には5月1日現在で743,698筆が集まり、国連に届けられています。
2010年のNPT再検討会議の最終文書では「核兵器禁止条約」について初めて言及がなされ、画期的でした。「核兵器禁止条約」は、現在、国際社会の場で大きな声になりつつあります。
今から17年前の1996年、国際司法裁判所は、核兵器のもつ非人道性から、「核兵器の威嚇・使用は一般的に国際法に違反する」との勧告的意見を出しました。人々を大量無差別に殺傷し長期間にわたって苦しみを強いる核兵器は、その非人道性と違法性から、人類と共存できない「絶対悪」です。にもかかわらず、地球上には今なお約1万9千発の核弾頭が存在しています。
また、2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故は、「いったん大気中に放出された放射性物質は科学の力では制御が困難であり、地域被害は長期間に及ぶ」ということを改めて私たちに警告しました。
私たちは、この間、市民レベルでの平和行進や被爆体験の継承、平和学習のための親子の集い、署名など多様な活動を展開し、核兵器廃絶を訴えてきました。核兵器がもつ非人道性と違法性、さらには「核テロ」の脅威と決別するためには核兵器をゼロにする以外に道はありません。
そのためには、多様な団体や市民が、異なる考え方を認め合い、力を寄せ合うことが重要です。そしてそこに蓄積されたエネルギーはやがては国際社会を動かし、「戦争も核兵器もない平和な世界」を実現することにつながります。
以上のことを踏まえ、私たち市民6団体は、本日の集いにおいて、次世代への責任として次のことを宣言します。
1)私たちは、人間の尊厳を土台に、思想信条の違いを超え連帯します。
2)私たちは、核兵器廃絶に向け、被爆体験の継承や署名、平和行進など多様な活動を展開します。
3)私たちは、「核兵器禁止条約」の締結に向け、国内外のNGOと連携します。
4)私たちは、平和市長会議が提唱する「2020ビジョン」や広島県の「国際平和拠点ひろしま構想」に賛同し、多くの自治体と連帯し行動します。
2013年(平成25年)5月24日
「戦争も核兵器もない平和な世界を」市民の集い実行委員会構成市民6団体